レメディオス・バロ ―月夜のダークファンタジー― I

(以下再録)
ある友人からレメディオス・バロ展のカタログを借りるという幸運に恵まれまして、そこから覚書として抜き出し、意見を述べてみようというシリーズ企画です。でも、あくまで覚書です。気が済むまで書いたら、まとめてキーワード化する予定。
第一回は、とりあえず彼女の世界観、彼女の物語を知ってもらいたいということから、彼女自身が作品について説明した文章をいくつか載せます。(1999年に名古屋にて行われたレメディオス・バロ展のカタログに準拠)

  • <編まれた時空> 1954年 >> 「私はこの上なく重要な秘密を、『究極の真実』の一部のようなものを発見した。…有力者や権力者は私がそれに精通しているのに気づいて、社会にとって危険極まりないと考えた。…彼らは私を捕らえて死刑を宣告した。死刑執行人は私を都市の城壁のような場所に連行した。城壁の側面から地面に向かって非常に急な坂が降りていた。」死刑執行直前に、彼女は死ぬ覚悟ができていないと助命を懇願する。彼は悟ったものは死を恐れない笑い、彼女は人生で重要なことを忘れていると気づく。彼女は彼に説明する。「私には愛する人がいて、彼の『運命』と私の運命を編み合わせなければならず、一度編み込むと私たちは永遠に結ばれます」そしてバスケットを編む手順で巨大な卵型の鳥かごを編み始める。編む材料はリボンのようで、どこからか彼女の両手に現れるが、彼女はそれが愛する男と自分の精髄だと自覚して夢は終わる。<<これは、レメディオスが自分のスタイルを確立するきっかけとなった夢のイメージです。この作品には、後の作品によく登場する「編み物」「編む材料がどこからか彼女の両手に現れる」イメージが登場している。
  • <予期せぬ訪問> 1958年 (ttp://www.informatik.hu-berlin.de/~navarro/arte/clip24.jpg) >> 「テーブルの下に隠れた窪みがあって、彼女はふつう犠牲者をそこに投げ落とします。しかしこの訪問者はその穴には大きすぎて、投げ落とせません。」
  • <毛力移動> 1959年 >> この男たちは気づかれないように変装した探偵です。彼らの髭は移動の手段としても役立ちます。窓から外を眺めている男が、ちょうど曲がり角にいる娘を髭を使って誘拐しようとしています。哀れな娘は驚いています。
  • <擬態> 1960年 (ttp://www.informatik.hu-berlin.de/~navarro/arte/clip26.jpg) >> 「この婦人は非常に長いあいだ考えに沈みじっとしていたので、肘掛け椅子に変質しつつあります。彼女の肉体は椅子の布地と同じ模様ができ、両手両足は曲がって木製になっています。家具は退屈し、椅子はテーブルを齧ります。背後の椅子は引き出しの中身を探り、猫は獲物を捕りに出ていたのですが、帰ってみると彼女が変身しているので、驚きショックを受けています。」<<カリントンの「自画像」との類似が指摘されている作品。だが俺はこじつけだと思う…