ちょっと前に書いた詩

さて 風が頬を撫でる 素敵な朝だが
今 自分がどこにいるのかさえ 知らない俺には
それは 精巧なガラス細工を通して見る水のようだ
朝に味があるかだって? さぁ…
重くわずらわしい“責任”という名の蚊に追いまわされている俺には
それは深海の水のようにミネラルたっぷりだ
幻想の沼に住んでいる あの白いポメラニアン
それは 同感だろう
時々物を壊したくなる とお前は言う
俺が壊したいのは自分だ
それを 壊すためにはどんな強力なブルドーザーが
必要だろうか
いや 蚊一匹でじゅうぶんだ 諸君
人間は 自分をうちこわすことに 夢中になってはいないか
チェックのカーテンのすみに捨てられた針
メールの受信を妨げてくれる いとしい針
挑戦的な犬の彫像に向かって
陽の光が 貨物列車にゆられている時刻に
俺は たずねた
今から どこへ行くのかと
歌う魂が そうさせたのだ 歌う
歌う魂が 俺にまだのこっている
それは驚きだ
人はみな ひどい疲労感をかかえているが
はりねずみほどの つたない疲労
だけど やりとげたいとか つながらないとか
口ばかりで あとは疲労
CD-ROMのような疲労感に取り囲まれている
真実に 目を向けさえすれば
向けさえすれば
お前の好きだった猫は 帰ってくることだろう
俺は うんちくをたれることはしない
その 能力が ないからだ
思うに 俺は 才能を棄てることを
おぼえはじめたのかも
皆 ひどくまじめな顔で俺を見ている
それこそ 狂気の証明ではないか
ほら 皆笑っていない 俺はもちろん笑わない
笑うのがキライなのだ
そんなことより「味の横丁」での破壊を見
ることで精いっぱいなのだ
涙がつたう お前の頬を
偉人だ 何だと書いてある教科書は ていねいに
油をぬりこんで火をつけよう

それが朝の始まりそして終わりだ