王様か乞食

さびしい王様(ISBN:4101131244)という本の中で、北杜夫氏が、「子供の頃に、将来は王様か乞食のどちらかになりたいと思っていた」というようなこと(本が手元になくてうろ覚えだが)を言っていた。それを読んだ頃俺は厨房で、意味が分からなかった。「王様は分かるけどなんで乞食になりたいんだよ」と思っていたのだ。しかし今は、意味が分かるような気がしている。俺も本当のことを言うと、似たようなことを考えているのに気づいたからだ。王様と乞食というのは大げさだし時代に合わないけど、俺は、超大金持ちフリーターのどちらかになりたいと思っている(あくまで夢だが)。超大金持ちになれば、おのずと超多忙になるが、欲しいものは何でも買える。例えば俺が急に最高級のピスタチオが食べたくなったとすると、すぐさまそれを注文できる。そして、大勢から敬われ、悪口を言われるだろう。一方フリーター、しかも、仕事がない日もあればある日もある、というようなフリーターになれば、自由時間ができる。うまくいけば、目覚まし時計を枕元に置かなくて済むというような、幸福にありつけるかもしれない。うちの父親のように、毎日仕事について愚痴をこぼし、仕事をやめたいやめたいと言いながら定年を待つしかないだけのサラリーマンを見ていると、その気持ちが強くなる。