I wish I were a bird

今日、帰る途中、家の近くの道路上で鳥が死んでいるのを見つけた。
車にはねられたのだろう。口から血を流していた。
俺は立ち止まった。道路に一歩出て、見つめた。ぐったりとした灰色の鳥。
辺りはシーンとしていた。まるで俺とこの鳥が出会うために用意された沈黙みたいに。
俺はその鳥の羽の根元をつかんで持ち上げた。
生温かかった。
俺は手に鳥をぶらさげたまま足早に路地を入った。
ぞっとする。
つきあたり。一台も車の停まっていないさびれた駐車場の横に、小さな小さな空き地があった。
草は生え放題、緑の泉に、ぽつんぽつんとのじぎくの白が咲いている。
ちょっとした高台になっていて、辺りが見渡せるところだ。
足を踏み入れると、虫がぱっと飛んだ。
俺はひざまずいて、地面に鳥を横たえた。
まだ暖かい鳥の体に触れてみる。頭をそっとたたく。
半目を開けているが、胸はつぶれていた。足は硬直している。
俺はそばに咲いていたのじぎくをつみとって、小さな体に添えた。
それから落ちていた枯れ枝で十字架をつくった。
水色の首輪をした茶色の猫が通りかかって、俺の作業を遠目で眺めた。
十字架をのじぎくの上に置く。
心の中で何か言おうとした。この鳥にかける言葉をさがした。
だけど俺が選んだのは、沈黙、という言葉。
最後に十字を切って、俺は立ち上がり、その場を去った。
初夏の緑のなかで灰色の鳥が横たわる。
のじぎくの白がその小さな頭を飾る。なんて美しい光景だろう!なんて、
美しい!
きっと虫たちがやってきて、鳥をむさぼるだろう。
でも、その鳥は一度でも空を飛ぶことができた!一度でも、親に大切にされた。
そうして土に還る。
眠れ、やすらかに眠れ、神の子。
永遠にもう、苦しみはないのだから。お前は空を飛んでいた。
青い空を。
神はお前を忘れないよ、鳥よ…、
俺は一滴の涙も流さずに家に帰りついたが、
心の中は言いようのない悲しみでいっぱいだった。